新胎内橋補修・補強工事-昭和の橋をよみがえらせる
PERSONAL DATA
田宮 一博 KAZUHIRO TAMIYA
新胎内橋の「塩害」による劣化を解消
SSI工法と炭素繊維シート接着工
新潟県胎内市の新胎内橋は、昭和41年に竣工し、これまでにも何回か繰り返し補修工事が行われていましたが、全体的な構造物の老朽化、積雪や融雪剤による損傷に加え、海岸線から1.5㎞離れているにも関わらず塩害による劣化が進み、定期点検で補修の必要性が指摘されました。
コンサルタントによる事前調査を踏まえ、現場で打音調査を行い、コンクリートの一部をはがして実際に確認し、修復・補強の場所や程度、最適な方法を決定。塩害対策SSI工法による修復と炭素繊維シート接着による補強の二工事を連続して施工しました。
今回は、材料選定時に塩害対策工法であるSSI工法を自主的に取り入れ、補修箇所の再劣化予防と長寿命化を図りました。その後、修復した橋桁に炭素繊維シート接着にて補強を連続施工しました。
施工時期によっては、材料をその時期に適合する仕様に変更し品質確保を図ったり、工事箇所の囲いや養生を的確に行う事でより品質の高い補修工事を行います。
橋梁内部の修復と表面の強化
コンクリートは強度や施工性の高さから、建築物、道路、ダム、橋梁、トンネルなどに広く使用されています。強度を確保するために鉄筋を入れて使われることが多いのですが、塩分が浸透し、鉄筋が腐食すると耐久性が劣ってきます。そうした問題は外部から見えず、実際にはつっていくと、新たな問題が発覚して作業が追加になることや、予想以上に修復必要箇所が見つかることも少なくありません。ですから、私たちは材料や構造についての知識や経験値を総動員し、安全確認に努めます。工事中は、「昨日と今日で変わっているところはないか」「まさかと思うところも確認」など、細部に至る観察も重要です。問題が見つかれば、協力会社はもとより、時には材料メーカーを巻き込んで対応を図ることも。最適な方法のためにできることを徹底して行います。
今回の新胎内橋では、カッターを入れて脆弱化したコンクリート部分をはつり、鉄筋の発錆部分はサンダーやワイヤーブラシで除去。その後、塩害対策SSI工法、つまり、コンクリートに含まれている内在塩分を吸着し、コンクリートの品質を改善する特殊な防錆ペーストを吹き付けました。その後、モルタルのドライアウトを防止し、接着性を向上させるためにプライマーを塗布し、ポリマーセメントモルタルを吹き重ねて仕上げました。
続いて耐荷性を向上させる補強工事に入りました。コンクリート面の凸凹をなくし、R面取りを行うなど下処理後を行ったのち、プライマーを塗布。さらに不陸修正パテを塗布し、施工部分をスムーズに仕上げます。接着用樹脂を下塗りした後に炭素繊維シートを接着させて、強化プラスチック化。この補強により、ひび割れ抑制、内部鋼材の腐食破断による耐荷力低下の抑制効果があり、さらなる長寿命化が狙えます。昭和に生まれた橋が寿命を延ばし、新しい価値を生み出していく――それが補修工事の目標です。
補修・補強の高まる需要に応え続けたい
一般的なコンクリート建造物の寿命は50~60年と言われています。高度経済成長期に大量に建設された橋梁やトンネルなどが、今まさにその時期を迎えています。同時に、気候変動や災害、通行量増加などが複合的に橋梁や道路に負荷をかけ、これまで以上に補修・補強が日本各地で大きな課題になっています。日本は「新しく建設する」から「補修して再利用する」方向へとシフトし、持続可能社会構築を目指しています。
当社は補修部門において、橋梁やトンネルの表面保護や断面修復などの分野で実績を積んできました。橋梁もトンネルもすべて人々の生活を支える、地域にとって重要なインフラです。工事を終えてコンクリートにとっていい環境づくりができ、構造物の新しい歴史が始まったと実感するとき、大きなやりがいを感じます。工事を通しての地域の人たちとの触れあいも励みになります。これから、補修の施工だけでなく、当社の保持技術を応用して、または全く新しい発想から、新技術や独自工法を開発していきたいと思っています。