欠之上スノーシェッド-豪雪から道路を守る
PERSONAL DATA
八木 恒司 KOJI YAGI
魚沼丘陵の峠に発生する「冬の通行規制」を解消
道路を覆う「スノーシェッド」
十日町市と南魚沼市を結ぶ国道253号が通過する八箇峠は、交通の難所。気象条件によって通行規制がかかり、冬期には積雪による通行障害や凍結によるスリップ事故が起きるなど、深刻な交通障害が発生していました。
そこで、豪雨や降雪時にも安全でスムーズな通行を叶えるため、トンネルとスノーシェッドの建設が計画され、当社はトンネルに南魚沼側で接続する欠之上(かけのうえ)スノーシェッド2工区合わせて約250mの建設を担当。2015年12月から2018年2月にかけ、2期に分けて施工しました。
スノーシェッドとは、山間部の道路や線路を覆うように建てる、雪崩をよけるための設備です。当社は昭和48年の設立以来、シェッドを開発し、専門メーカーとして全国で施工実績を積んできました。
圧縮に強い一方、引張に弱いコンクリートの弱点を克服するプレストレストコンクリートを用い、あらかじめ工場で製作したプレキャスト部品を現地で組み立てる独自工法は、工事自体の品質の高さはもちろん、工期短縮やコスト軽減を実現し、この分野での当社シェアは平成23年度以降、70%超をキープしています。欠之上でもこの工法によるスノーシェッド建設を実施しました。
スノーシェッドと堰堤施工の複合工事
自然の中で行われる道路防災の工事は、地形や気象などの影響を受けるため、一つとして同じ現場はありません。その上、欠之上は、すでに開設された道路区間へのスノーシェッド建設と、スノーシェッド背面にあたる山の斜面側での砂防堰堤施工を同時進行させる複合的な工事。そのため、特別なアプローチが必要でした。
最大のコントロールポイントは、背面のコンクリート砂防堰堤建設のための進入路の確保。進入路がスノーシェッド施工区間を横切るため、シェッドの架設工事は2期に分けて計画しました。また、一般の通行ができるよう1車線を残し、土砂を埋め戻して大型重機を通すための仮設道路を構築するなど、私も初めて経験する内容になりました。限られた時間に複数の工程を安全に進めるために、建設業者や調査、施工担当などと綿密に連携を図り、工事の計画・工程管理を行いました。
スノーシェッドを支える既設の基礎部分を事前調査し、工場でプレキャスト部材を製造。トラックで現地へ搬送後、200トンの大型クレーンで部材を吊り上げて設置し、ポストテンション方法で剛結。進入路を避けて左右からプレキャスト部材を架設していく、まるでパズルを組み込むような中埋架設方式を採用し、予定より早期の完工を実現しました。
この現場に参加した当社の社員は監理技術者(1工区)を務めた私を含め3名で、管理や確認に当たります。クレーンオペレートや実際の施工は協力会社が担当しますが、専門性の高い工事なのでメンバーは固定です。信頼関係やリレーションは万全ですが、安全性を担保するため毎朝の朝礼を活用し、進捗状況や予定の共有、安全の徹底を図りました。砂防堰堤施工を含む当工事では、特に天候の変化、急な増水への注意喚起、避難訓練の実施を心がけました。管理者として、工事の完結はもちろん、作業員の安全を守り、何事もなく終了できたことに大きな達成感を抱いています。
日本に点在する自然災害危険箇所を守る
当社は防災の専門メーカーとして、シェッドを始め様々なプレキャスト部材を作り続けてきました。高強度の素材、工場での製造による品質の高さと均一性が特徴です。実際に、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨など昨今の災害においても、当社施工案件の破損はありません。強度だけでなく、作業面でも天候に左右されにくく、また現場の作業量の軽減が叶うため、昨今の人材不足や早期の災害復旧という課題にも対応できます。
山地が国土の70%を占め、台風や降雪、地震などの自然災害に繰り返し襲われる日本。防災の観点から、雪崩や落石から道路を守るスノーシェッドやロックシェッドなどの日本サミコンの製品や技術が求められる場面は全国に存在しています。地形に合わせ、自然や風景に配慮した工事によって、動物や植物と人が共存しながら安全に通行できるようにする、それが当社の使命です。
施工管理の仕事は、課題解決の方法を考え、地形図や設計図から構造物の形を思い描き、CG化したものをもとにクライアントや関連部署とセッションしながら具体化を図ることです。一つの工事を動かし、大きなモノを作っていくのはこの仕事の大きな魅力です。自分自身が関わった道路に名前が付き、地図に掲載される、そして、その後に家族と通りかかったときに「ここを作った」と伝えられる誇らしさが、次の仕事へのモチベーションにもなります。
新しくなった八箇峠道路は関越自動車道からのアクセスもいい場所です。地元の人たちの利便性向上に役立つだけでなく、ここを通って、多くの人たちに新潟の自然や食を堪能してもらえたらと思っています。