現場通信 FILE 11
強度と環境性を併せ持つ「土」の可能性を拓いたロックジオバンク
廣江 生志SHOSHI HIROE
建物や道路を落石から守るロックジオバンクは全国37カ所で設置されていますが、記念すべき第一号を含め。その20ヵ所は島根県内で施工されました。担当したのは、ジオバンクのエキスパート、廣江さんです。
樹脂加工したメッシュ素材をはさみながら土の層を重ねて形成した土の壁で、落石・雪崩・土砂崩れを食い止めるジオバンク。コンクリートや鉄よりも強いという土の力について、廣江さんに聞きました。
落石エネルギーを吸収する
――「土」がコンクリートより強いって本当ですか?
衝撃に対しては強いですよ。コンクリートは衝撃を受けるとひびが入ったり割れたりします。が、土はやわらかいから衝撃を吸収しますし、少々へこむくらいだから、修復も簡単。繰り返し衝撃を受け止めることができるんです。
――衝撃を吸収するんですか。
ええ、それについて、実は面白い話があるんです。2011年のジオバンク初施工の直前、あるテレビ番組で「土の壁と鉄球とはどちらが強いか」という対決をしたんです。ジオバンクの同じところにピンポイントで鉄球をぶつけても耐えられるか、とういものでした。
――勝敗はどうなりましたか?
40回ほどぶつけられ続けて破損し、最終的に判定は負けでした(笑)。でも、本来の使われ方とは違うし、実物実験で17トンの重りを斜面高37mから落として安全性を確かめているので、私たちはおもしろく拝見していました(笑)。
テクノロジー×土で強度を高める
――ジオバンクはどのようにして造っていくのですか
土の層の間に補強用シートを挟みながらローラーで圧縮して積み上げ、土壁ができたら保護用シートで全体を覆います。強度を上げたい場合は、斜面側に砕石を詰めたハニカム構造の緩衝材を足しますが、この威力は大きいですよ。なにしろ、湿地帯を戦車が走行できるように開発されたシートなので、強さは折り紙付きです。
――強さ以外にも優れている点があると伺いました。
コストと環境性は群を抜いていると思いますよ。材料の土は日本全国どこでも手に入りますし、工事現場から排出される土を使えば、材料費はゼロ、その上、産業廃棄物が減らせて環境に優しい。今の時代にかなった工法なんです。また、サイズ的にも小型で、道路わきのスペースにも無理なく設置できることもポイントです。日本の事情に合っていると思います。
日本のあらゆる斜面をジオバンクで守りたい
――ジオバンクにはメリットがいっぱいですね。
そうなんですよ!だからもっと広めたいと思って、マニュアル用の動画を自主製作しました。文章よりぐっとわかりやすいと自負しています! 特殊な重機は必要ありませんから、工法がわかればそれぞれの地域で地元の業者さんが施工できる。そうなってほしいと思っています。
――廣江さんにとってジオバンクとは?
2011年に第1号を手掛けたこともあり、ジオバンク工法は私には特別なもの。今後は、落石・土砂だけでなく、水に対しての強度、耐性を上げて、川の堤防に適応できないだろうかと考えています。地球温暖化に伴い、水害が増加し、被害は甚大になっている状況にサミコンとして何かできれば。それが私の今後の目標です。
編集後記
補強土壁、ジオバンク。技術で土のポテンシャルを高め、落石や雪崩、崩落土砂を防いでいます。日本サミコンでは、廣江さんを筆頭に、その適応の場をさらに広げ、あらゆるケースで安全が守れるよう取り組みが続いています。
文・現場通信編集部
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