現場通信 FILE 01
あしかけ2年の夜間作業、プレキャストインバート設置工事
安部 雅詩MASASHI ANNBE
国内でも珍しい、フルプレキャストでのトンネル改修
迂回路がなく、全面通行止めの難しい甲子トンネルの改修工事では、工場であらかじめ作ったインバートを用いることで、週3日の夜間通行止めでの施工を実現しました。
インバートとはトンネル底面に設置するアーチ型のコンクリート。現場ではなく工場で製作したインバートは「プレキャストインバート」と呼ばれます。プレキャストインバートを用い、現場では搬入・設置のみを行う施工は国内3例目。プレキャストインバートを利用するメリットと工夫や経験を、施工管理を担当した工務部の安部さんに聞きました。
前例の無い工事、施工の全てが手探り
今回の工事は、既設のインバートが、地面の隆起によって破損してしまったことによる改修工事でした。
――プレキャストインバートでは、地面の隆起による破損を防げるのでしょうか?
コンクリートは形成後、長い時間をかけて強度を増していきます。コンクリートに強度が出る前に、再び破損してしまうことを避けるためにも、プレキャストは有効。コンクリートに十分な強度が出てから設置することで、インバートが負荷に耐えられるようにしました。
――前例の無い工事に不安はありませんでしたか?
正直不安はありました。さらに夜間のみの通行止めである今回の現場では、時間制限のある中でスピーディな作業が求められます。本番で慌てることなく、効率良く作業するために力を入れたのは、事前準備です。
準備では現場を模した仮トンネルを作り、実際の工事を想定し様々な実験を行いました。実験を通して効率の良い作業方法を見つけ、現場に入る前に作業を体験できたことで、不安を取り除けました。
一時は遅れた施工進捗を取り戻す執念
誰も慣れていない現場、狭い空間での大きなインバートの施工では、戸惑うことも多かったはず。
――慣れない現場での施工はどうでしたか?
施工は2年かけて行われたのですが、1年目は予定通りに作業を進められず、進捗に遅れが生じてしまいました。しかし決められた工期に対する責任と、進捗が遅れたことへの個人的な悔しさもあり、「2年目は何としても巻き返してやろう」と意気込んだのを覚えています。実際、2年目は私含め作業員全員がコツをつかみ、作業効率を大きく向上。1年目の遅れを取り戻し、工期通りでの完工を達成しました。
編集後記
前例の無い施工を工期通りに完了できたのは、高い技術力だけでなく、入念な事前準備と仕事に対する強いこだわりがあったから。日本サミコンの仕事に対する姿勢が垣間見える現場でした。
文・現場通信編集部
工事概要
名称 | 道路橋りょう整備(交付)工事(TN改修) |
---|---|
場所 | 福島県西白河郡西郷村大字真船地内(甲子トンネル) |
発注 | 福島県県南建設事務所 |
担当支店 | 北陸支店 |
工期 | 平成30年(2018)6月1日~令和元年(2019)10月31日 |
現場通信
-
現場通信 FILE 01あしかけ2年の夜間作業、プレキャストインバート設置工事
-
現場通信 FILE 02有害物質との闘い、富月右岸取付橋既設塗装撤去
-
現場通信 FILE 03土砂崩れから人命を守る、太田川アースシェッド建設
-
現場通信 FILE 04セイタカアワダチソウ駆除を行いました
-
現場通信 FILE 05育休体験記
-
現場通信 FILE 06島根技術発表会に参加し、落石対策について講演しました
-
現場通信 FILE 07全国各地の安全を支える縁の下の力持ち、”現地踏査”の専門部署
-
現場通信 FILE 08日本のトンネル工事を変える、PCL工法専用機”スピンアーム”
-
現場通信 FILE 09シェッド上に水路が通る珍事例、”湯出ノ沢スノーシェッド”
-
現場通信 FILE 10スノーシェルターで歴史的な難所を安全な道路に変えた
-
現場通信 FILE 11強度と環境性を併せ持つ「土」の可能性を拓いたロックジオバンク
-
現場通信 FILE 12周囲の理解と協力とデジタル化が育休取得を後押しした
-
現場通信 FILE 13雪崩から道路を守るスノーシェッド工事に、女性技術者が挑む